当時の私は六年生。体が大人になったって心はまだ子供。

”死”をしっかり認識してなかったかも知れない。

悲しむ一平くんを助けたかっただけなのかも知れない。

それとも辛い思いを共有したかったのかも知れない。


だから『一緒に死ぬ』って言ったのかも知れない。


知れないばかりだけど....今の私にはもう分からない。
分かるはずがない。

あの頃の私には戻れない。


私....一平くんが好きだった。

だけど、そんな感情を出したら、女子から嫌われて。
それがつらくて殺してたんだ。



小坂くんは耳元でささやくように話した。

「それから一平さんは綾乃を溺愛するようになるんだ。
溺愛しすぎて、周りの女子たちの嫌がらせが目に入らず、綾乃を苦しめたことは反省していたよ」

小坂くんは小さく笑った。

黙って聞いていた私のほほを伝う一筋の涙は止まることを知らなかった。


「俺も一平さんも愛し方は違うけど、綾乃を大切に想ってる。
だから綾乃も俺たちのことちゃんと考えて欲しい」


優しく髪をなでる風はまるで小坂くんの心を代弁するかのように私を包み、

優しくふりそそく夕日はまるで一平先輩の心を私に教えてくれるかのように照らしてくれる。


夏の訪れを予感させる風の匂いは私を素直にさせてくれる気がした。