彼のぬくもりがかえって私を激情の渦に巻き込む。


「一平くん死なないでぇーーー」

小坂くんの腕の中で、私は頭を押さえて激しく身もだえる。


「落ち着けっ!」


彼の手に力がこもる。


私は理性を失っていた。


蘇る記憶が私を完全に支配していた。



『一平くん泣かないで。綾乃も一緒に死ぬから』


『じゃあ一緒に行く?』


『うん』


ああ、思い出した。

夜の街の明かりはとても綺麗だったっけ。

二人で手をつないで、柵を乗り越えて....。


『一平くん、ビルの明かりが宝石みたいだよ』


『綾乃?』


『夢みたいだね。一平くんの夢は何?』


『俺の....夢?』


『綾乃はね、一平くんのお嫁さん』


『...!?』