祐也と私と一平先輩

「まだ話は終わってないよ」


ゆっくりとした物言いなのに、俊敏な動きで棚倉先輩の手は私の手首をつかんで離さない。


な、なんで?

戸惑いながらももその手を振り払おうとしたけど、離してくれるわけもなく。


「私は話すことなんてありませんから」


ここは毅然とした態度をとらないと。


「僕はあるんだけどな」


「でも授業も始まるし」


「サボればいいよ?」


「お願いです。その手を離して下さい」


「話が終わったらね」


棚倉先輩はまたも不敵な笑みを浮かべる。

ここで押し問答を続けても、意味はない。

おそらく話をするまで私を開放してくれないだろう。

.....仕方ないか。

私はため息をつくと、あきらめて棚倉先輩につきあうことにした。


「あの、話ってなんですか?」


「そうこなくちゃね」

笑顔を作ると私の手を引いて、棚倉先輩がさっきまで昼寝をしていた物置部屋へと行こうとする。

「ちょ、ちょっと待って下さい、ここで話ましょう」