祐也と私と一平先輩

ひと気のない廊下を肩を並べて歩いている時だった。

「あ、悪りい。
俺部活の顧問に用があるから先に昇降口で待っててくれるか?」


「うん、いいよ」歩きながらうなずく。


「すぐ終わるから」


そう言い残して小坂くんは職員室へと向かった。



独り私は昇降口に向かうと下駄箱で靴を履き替えていた。


「ほらあの子」


「わっ、マジで?」


「全然可愛くないよね」


背後であからさまに聞こえる悪口。


下駄箱には私しかいない。


当然悪口は私に向けられたものだとすぐに解った。


一瞬心が冷えるのを感じる。

そもそも悪口なんてものは気分が良くないのは当然だけど、それによって心の均整が乱されるのが一番イヤだった。

その後に沸き上がる感情は重く深く私をしばらくの間落ち込ませるのだから。