祐也と私と一平先輩

「うわ狭い」


中には壁と一体になった、小さなベンチが向かい合うようについている。


おそらく大人が4人入ったらヒザが当たってギュウギュウになる狭さ。


小さい窓も二か所にある。


きっとこの窓から子供たちは『お母さーん』なんて手を振るんだろうな。

私の小さき時はこんなの無かった。

大きい段ボールに入った宅配の商品が届いた時に、お母さんに手伝ってもらいながら、カッターで窓を作ったり、クレヨンで壁に模様を書いたりしたっけ。


「どう?」


先輩が屋根に手をかけて中をのぞいてきた。


「狭いけど楽しいっ。特別な空間みたい」

キラキラした瞳で先輩に答える。


「子供って狭い場所好きだよな」


「大人になってもこんなの大好きだよっ」


「綾乃はまだ子供っ」

そう言って私のほっぺを”ぺチン”と軽く叩いた。