……はあ。疲れた…

黒いパンプスを放り出すように脱いだ。

午後10時。しんと静まり返ったセミ・スィートの部屋。

初めの頃は感動ばかりだったけど、慣れてくるとその豪華さが空々しく感じてくる。

所詮、庶民な私には合わない。

そう捻くれた考えを持ってしまうのは今日の出来事が私の心を暗くしているからかもしれない。


イベント3日目の最終日だった。

ベリロイのブースにもたくさんの人が訪れ、私も寺島先輩も大忙しだった。


撤収後、7階のイタリアンレストラン
『Bocca felice』の個室で寺島先輩、応援隊として携わってくれた広告代理店の社員数名と打ち上げの食事会を開いた。


「短い間でしたが、未熟者の私にお力添え頂き、本当にありがとうございました」と最後に挨拶をしたら、皆が大きな拍手をくれて涙が出そうになった。


ピンクとクリーム色の大きなバラの花束がデレク社長名義で届き、その細かな心遣いに我慢していた涙を堪えることができなかった。


だからこそ、ビッキーの件が苦いものとして心に残ってしまう。