「離れていても莉子のことならなんでも知ってますよ。
なぜなら、ほとんど毎日、莉子が出したゴミを持って帰って丹念に調べてるんだから。昨日はコンビニ弁当だったろ?。デザートは杏仁豆腐だ」


「…人のゴミ持って帰ってって…」


この人、狂ってる。


「俺だって自分のやってることおかしいと思ってるよ。でもさ、それくらい莉子が好きなんだ、忘れられないんだ」


目を血走らせた宗馬が正座をしたまま、じりじりと近付いてくる。ゾンビになりたての人みたい。

逃げなきゃ、いや。変に刺激したらまずい。どうしよう、怖い。
警察、いや。何もないのに呼んできてくれるのかな。

頭が混乱して体が動かない。


「莉子おおおお!」


あっと思った時には、宗馬に押し倒されていた。ミニテーブルは横倒しになり、陶器のカップが割れる音が響く。

カーペットの床に思い切り頭を打ち、私はううっと呻いた。


「な、な、な?昔を思い出してくれ。俺のテクニックで思い出させてやるから」


宗馬が私から少し体を離した途端、びりり!と甲高い音がした。

私のブラウスを宗馬がボタンごと引き裂いたのだ。
あまりの驚きと恐ろしさに声が出なかった。