「いやね、ここのビルに入ってる食品会社のOLさんに痴漢と間違えられちゃったんですよ。エレベーターの中でね。
手首掴まれてこの人痴漢ですって、ここまで連れてこられちゃったんですよ。

女の人と取り押さえていた男の人達は、痴漢が間違いだと分かったら、さっさといなくなっちゃった」

気の毒そうに寺島先輩を見た。


間違いって……

「なんです?それ!本当に失礼な話!だいたい先輩が痴漢なんて卑劣な真似するわけないの!」


田中さんに言っても仕方ないのに。私はつい怒鳴ってしまった。



疑惑は晴れたはずなのに、先輩の目は興奮のせいか真っ赤に充血していて、私と一緒にparaisoのオフィスに戻ってもなかなか治らなかった。