「漣(さざなみ)ー!」

学校までの道を1人で歩いていた私の後ろから、私の名前を叫ぶ声がした。
振り向くと、幼なじみ、渉(わたる)の姿があった。
8月の朝7時は、まだ朝だというのに少し暑く感じる。
そんな中、渉は元気にこちらに走ってきている。

「渉ー!」

名前を呼び、手を振る。
嬉しそうに手を振り返してくる。
可愛いやつ。
小さく笑って、渉を待つ。
目の前まで来た時には、少し疲れた顔をしていた。

「走ってこなくてもよかったのに。」
「あのな、俺待たせるの嫌いなの。」

クスクス笑う私を横目に、渉がため息をつく。
待たせるのが嫌いと言うくらいなら、私が家を出るくらいに渉も出ればいいのになぁ。
そんな事を思いつつ、2人で歩き出す。
ちらっと隣をみる。
短めの茶色の髪。
黒縁メガネ。
茶色の瞳。
可愛らしい顔立ち。
その癖、身長は180cm。
可愛い顔して男らしい性格。
そのギャップからか渉はモテる。
私が隣にいられるのは、幼なじみだからだろう。もし、幼なじみじゃなく、たまたま同じクラスになったとかだと、きっと話すことも出来なかった。
私にとって、“幼なじみ”というのが渉の隣にいれる理由。
たとえ渉に彼女ができても、私は幼なじみという、渉に近い位置にいれる。
それだけでよかった。
はずなのに…。

昨日の放課後、見てしまった。
渉が告白されることろを。
今まで呼び出されるのはよく見ていたけど、告白される場面をみたのはこれが初めてだった。
モヤモヤする…。
幼なじみという位置でよかったはずなのに…。

「漣?俺の話きいてんの?」

ムッとしたような声にハッと我に返る。
いつの間にか学校についていた。
渉をみると、案の定拗ねたような顔をしている。

「ごめん、考え事してた…。」
「…どんなこと?」