体育館には、外と出入りする扉が6つある。
普段、生徒が出入りするのはステージの向かい側にある2つ。
そして、ステージに向かって両側に2つずつある。
右側は校庭に面していて、左側は住宅街に面していた。
ボールが出ていった扉は、左側のステージ寄りの扉だ。
外に出てみると、生い茂った雑草が視界に広がった。
季節は夏に移り変わろうとしていた。
学校の敷地と住宅街は、背の高い生垣で隔てられている。
あまり手入れされていないようで、長さの違う枝がピョンピョンと好き放題にのびている。
きっと夏休みに入れば、生垣も剪定され、雑草も綺麗に刈り取られるのだろう。
刈払機の音と燃料の臭いは苦手だな、とぼんやり思いながら周囲を見渡すと、雑草の中にボールを発見した。
ボールを手に取ったその時――。
ふいに人の気配を感じた。

