――ふと、思った。
俺と彼女が昼休みを一緒に過ごすようになって一週間ほど経った頃。
昼食を食べ終えたら、体育館裏の空き地で猫を眺めながら、彼女と他愛ない会話をする。
それが、日常になりつつある――。
何がきっかけだっただろう?
…………そうだ。
バスケをしていたらボールが体育館の外に出てしまって、それを取りに来た俺が彼女を見つけたんだ。
それから、俺は、毎日ここへ出向いている。
…………なんのために俺はここへ来ているんだろう。
最初は、ここで彼女が何をしているのか知りたかったから。
でも、今は、彼女の目的も分かった。
俺は、ここへ来る理由がなくなった。
俺は――
いつの間にか、興味の対象が"彼女の目的"ではなく、"彼女"になっていた。
なぜ、俺は、彼女自身のことを知りたいと思うようになったのだろう。
「――田辺くん!」
彼女が呼ぶ声で、考えていた疑問の答えはフッと消えてしまった。
何がおかしいのか、彼女が太郎を指差して笑いながら俺の方を振り向いた。
花が咲くように笑う、とはこんな笑顔のことをいうんだろう。
その笑顔を見ていたら、今まで考えていたこともどうでもよくなった。
どうせ、答えなんて分からない……。
俺が、答えに気づくのは、もう少し先――。

