――少し、意外だった。
なんとなく、彼女はもっとさっぱりとしたイメージがあって、振った相手のことなんて一日経てば忘れているような人間だと思っていた。
勝手に悪い印象を持っていてごめん、と心の中で謝った。
……とにかく、かなり心配しているようなので安心させることを言わないと。
「この事伝えれば、あいつ喜ぶと思うし」
「……この事?」
…………少し言葉が足りなかったか。
「あいつが、和花葉さんに心配されていることを知れば喜ぶと思ったんだよ」
「……どうして喜ぶの?」
「…………」
言葉を補ってなお、和花葉さんは不思議そうに首を傾げた。
予想外の返答で、俺は困惑した。
そこから説明しなければいけないのか。
「え、っと…………笹木が和花葉さんのことが好きだから、和花葉さんが自分を心配してくれているっていう事実で、立ち直れるんじゃないか、と俺は思ったんだけど……」
こんなことに細かな説明をしている自分に、少し恥ずかしさを感じ始めた俺の心中に反して、彼女は眉をひそめたままだった。
「……ごめん。わからない」
「…………」
えぇ……。
「私は彼の想いを無下にしたんだよ。彼は私を――」
そこで口を噤み、俯いてしまった。
なんとなく、彼女が俺の言っていることを理解できない理由が、分かった気がする。
つまり和花葉さんは、私は彼を傷つけてしまったから、彼に――少し大袈裟かもしれないが、嫌われたのだと思っている。
だから、私が彼を心配することで彼が喜ぶはずがない、という考えを持っている。
もし、そういう理由であるならば、彼女は本当に無垢で繊細な心の持ち主だ。
それなら、これ以上説明しても仕方がない。
彼女は、自分が振ったにも関わらず、その相手が自分に好意を抱き続ける、という前提さえも理解できないのだから。
笹木の元気な姿を見せることが、彼女を安心させる確実な方法だ。
放課後にでも笹木に伝えよう、と決心した。

