今まで雑草ばかりだった足元が、乾いた土の地面になった。
足元から視線をあげると、そこには一人の少女と一匹の猫がいた。
少女の方は俺もよく知っている、クラスメイトの山本和花葉だった。
彼女はどうやらしゃがみこんで、猫に餌をあげているらしい。
猫の方は……見たこともない毛色をしている。
白、ではなく銀と表現した方が正しいか。
陽の光に照らされて、きらきらと輝く毛はゆったりとした動きと相まって、とても上品だ。
ヘーゼルの虹彩の目は、大きく、くっきりとしていて、首には赤い首輪をつけている。
野良猫ではないと断言していいと思うのだが、どうしてこんな場所で、山本はこの高貴な猫に餌をやっているのか。
猫に餌をあげ終えると、山本はようやく、ゆっくりと俺の方を見た。
「田辺くん、だっけ?」
そう言って彼女は首を傾げる。
頷く俺。
「……」
「……」
会話が止まった。
彼女と同じで、俺はもともと口数が少ない。
それに聞きたいことがありすぎて、何から話せばいいのか分からず、戸惑っていた。

