「何故?」と言うと、彼は苦笑しながら言う。「愛実が機嫌悪くなったのって、昨夜からだよなぁって思ったら、思い当たる事は、1つしかねーし。」また、フッと笑って、更に追い討ちをかけてきた。
「愛実は、俺がキャバクラに行ってたのが嫌だったんだろ?」
う、うんと言いたくなくて、黙っていると、彼は、勝手に続けた。
「それって、妬いてるって言わねー?」と、なぜか楽しそうに言った後、車から降りた。
慌て、私も車から降りた。

 嫉妬したのだろうか?
今日は、スーパーでの売り上げを纏めている。
マーケティングの資料作りだ。
その資料を見ながら、ふと気が抜けた時にそんな事を考えてしまう。


 「私は、嫉妬したんですか~?」
「そうなんじゃないの?」と、軽く返してくれたのは、言わずもがな、有希さんだ。
社内の休憩スペースで、昼食を食べながら今朝の事を話した。
給料日前なので、有希さんはここのところお弁当を持参している。
「はあぁ、何となく解ってました。」
「へ~、森高さんも、妬いたりするんですね、意外です。」と、今日は、事務作業をしていた井川君が、言ってきた。給料日前だからか、カップラーメンを持参している。
 「自分でも、意外でした。」私がそう応えると、「でも、キャバクラ行く男が好きって女はいないでしょ。怒って当然じゃない?」
と、有希さんがフォローしてくれた。
「支社長も何回か断ったらしいんですけど、流石に昨日はしつこかったらしくて、で、結局俺まで付き合わされたんですよー。しかも、その人、そのスーパーの本社の人で、その人のおかげでデータ貰えるんで、あまり邪険に出来ないんすよ。」
と、井川君が支社長をフォローしていた。
 私は、そっかー、井川君がいたから昨日はタクシーだったんだ。と、関係の無いことを考えた。