お見合いですか?

 会社に戻ると、林がまだ残ってた。
愛実が残っているときは、声をかけてくれるのだが、帰ったのだろうか?
給湯室に居るかもしれない、荷物を置いてから、向かった。
 コーヒーが一杯分だけ残されている。
それを見て、顔がにやける。
愛実が淹れて置いてくれたのだろう、それを自分のカップに淹れて、デスクに戻り、パソコンの電源を入れる。
 林から、メールを確認してくれる?と言われ、早速メールを開いた。
 
「林、携帯にしてくれ。」
「えっ、俺としては気を使ってこっちなんだけど。」と言い返されてしまった。
まぁ、愛実に見られるかも?と思いこっちにしたのだろう。
でも、「本社の人間に見られる可能性もあるだろうが。」
「大丈夫だって、そこまで、チェックされるのは、お前に横領疑惑がかかったときくらいだろ。」
開いたメールには、こう書かれていた。
"小西さんが、前に派遣で来ていた彼女のことを、話したらしい。それが、きっかけみたいだ。"
 「そう言えば、聞き忘れてたけど、誰からの情報だったんだ?親父さん?」
「言ってなかったっけ?藤堂さんだよ。」
 林は、そう答えると、「じゃあ、お先に」と、軽く言って帰った。

 メールを開いたついでに、他のメールもチェックする。が、内容が入って来そうに無い。
林が言っていた、藤堂とは、兄貴の奥さんだ。
随分と懐かしい人の名前を聞いた。
最悪だ、多分あいつ、ろくでもねー事吹き込んでるな。
 藤堂真理とは、家が近所で、所謂幼なじみだ。
年が同じで、兄弟みたいに育った。本当に、兄弟だ、どちらかと言うと、むこうが兄だ。女だと意識したことがなかった。
真里が兄貴のことを好きなのも判っていたし。

 ただ、最悪なことに、幼稚園から大学まで同じ学校で育った。そう、奴は、俺の過去を知ってる、女関係に至っては、親より知ってる。

 昔から、大人っぽい年上の女性が好きだった。まぁ、小学校の時の音楽の先生とか、中学の時の保健の先生とか、多分皆、通る道だと思う。勿論全て片思いに終わる。
 高校に入学して好きになったのは、いっこ上の先輩で、バスケ部のマネージャー、部活見学で、彼女に一目惚れして、入部。
したはいいものの、すでに先輩の彼女だった。