車で来て良かった。
彼女は、ふらふらして、覚束ない足取りで、歩いているのがやっとという感じだった。
車に乗せると、途端に寝てしまった。

 マンションの駐車場について彼女を起こす。
だいぶ眠いらしく、起きてもふらふらだった。
何で、こんなに酔ってんだ?

 やっとの思いで、部屋の中にはいり、愛実をソファーに座らせた。
彼女は、またクタリと寝てしまった。
溜め息を吐いて、彼女に寝室から持ってきたタオルケットを掛けてやった。

 深夜、彼女が寝室に入ってきた。
シャワーを浴びてきたらしく、まだ髪が濡れていた。
どうやら、パジャマに着替えるらしい、そーっとドアを開けて、俺が動いたのが判ったのか、「ごめんなさい、起こしちゃいました?」と言った。
「ああ、まぁ、いいよ。電気点ければ?」
仕方なく、上半身を起こした。

 着替え終わると、彼女が電気を消してベッドに近づいてくる。
「今日は、、その・・ありがとうございました。」
ベッドの上にわざわざ正座をして、頭を下げてきた。
「はぁー、どうして、そんなに呑んだんだ?」
「だって、色々、悠斗さんの事聞いてくるんだもん。」  
「だから呑んだのか?」
「はい。・・だって、恥ずかしいじゃないですか。でも、答えられないと、呑めっていわれるし。それで、呑まされちゃった感じ?」
「ふーん、まぁいいや。もう寝る。」
そう言って、また横になった。
彼女は、誰にともなく言っていた。
「でも、良かった~。礼央君が立派なパティシエになってくれてて、別れた意味、あったんだよね、きっと。」
 彼女と、元彼の間に何があったか知らないし、知りたくもない。
でも、ふと思いだしてしまう。
あの頃の彼女を。
何となくだけど、愛実のほうが別れたく無かったんだろうな。