会社に戻ると、彼女に白い目で見られた。舞とのことを責めているのだろう。
いや、会ったのも、すごく久しぶりだったんだけど。別に付き合ってたわけでもないし・・
彼女の視線を無視して、仕事に取りかかった。

 年度末というのは、何かと事務処理が多くて面倒くさい。それに加え、来週から、森のパスタのプロジェクトが始動する。
その準備もあるので、彼女はとても忙しいらしい。
考え事をしていたら、電話がきた。
電話してきたのは、林のおじさんだった。
ここにいる、林 康太(ハヤシコウタ)の父親だ。
俺と康太は従兄弟同士だ。俺の親父の姉さんの息子が康太だ。同期なので、仲はいい方だ。

 「何の用でしょうか?」自分でも不機嫌な声だと思った。
「あれ?機嫌が悪いな?」
「いえ、そんな事ありませんよ。で、用件は何でしょうか?」
「んじゃあ、単刀直入に言おう。来週の会議お前も参加しろ。これ、社長命令だから。」

 言う事だけ言って、切られた。
はぁ、やっぱりそんな予感がしていた。

「森高、ちょっといいか」
支社長室なんてものはないが、観葉植物と、棚によって、少し仕切られてる。
そのスペースに呼ばれた彼女がやってくる。
デスクの前に立って、「何でしょうか?」と少し不安そうに聞いてきた。

「来週の、本社での会議だが、俺も行く事になったから。」
「えっ?そうなんですか?」
「ああ、それで、車で行きたいんだが、いいか?」
「勿論です。首都高はちょっと、怖いんで、関越入ったら交代します。」
やたら、張り切って話す彼女に苦笑した。
ああ、電車で行くの、よほど嫌だったんだろうなぁ。
朝も、早起きが苦手なくせして、俺に合わせて出勤しているくらいだ。
「そうか、じゃあそいうことだから、宜しくな。」