そんな風に盛り上がっていると、カウンターの方で、マイクを使って、店長さんから挨拶が始まった。
そろそろ、おひらきの時間らしい。
カウンターの前には、店の従業員が並んでいて、その中に知っている人を見つけた。
彼から、目を離せずに、固まった。

 カウンター近くの人達から、お土産だろうか、紙袋を受け取って会場を後にしていく。

 「愛実?」と、明日香が腕を揺すった。
「ああ、ごめん。礼央君がいた。」 
彼から、視線を明日香に戻した。
「えっ?元カレ?」
「うん。」
彼も私に気づいたらしい、人の流れに逆らってこちらに来た。
「愛実?」と自信なさげに呼ばれて、「久しぶりだね、礼央君。」と返した。

 いきなり、抱き締められた。
 
 えっ?ちょ、ちょっと待って。
別に恋人同士でも無いのに何この流れ。
「まさか、今日会えるなんて、思わなかった。」と、気付けばハグされていた。
海外生活が長かったのね、きっと。
すぐ、離されるかと思いきや、ぎゅうぎゅう抱き締められているではないか。
うーん、これはまずい?
考えていたら、明日香が助けてくれた。

「ちょっと、注目されてますよー。」
軽く、茶化しながら言われてお互いに離れた。
 
 「愛実、そろそろ帰ろう?」明日香に言われて意識が戻ってきた。
「じゃあ、礼央君、またね。ああ、そうだ話したい事があるから連絡して。」
そう言いながら、自分の名刺の裏に携帯の番号を書いて渡した。