ブカブカに垂れた袖をまくりながら、香ってくる長瀬の香りにドキッとする。
長瀬ってこんな匂いなんだ。
何の柔軟剤使ってるんだろ?
ベリー系のほんのり甘い香りがする。
長瀬なんかには全然似合わない香り。
だけど、嫌いじゃないな……この匂い……。
「なぁ、センパイ」
廊下にいる長瀬に呼びかけられて、ハッと我に返る。
今しがた自分のしていた行動に気付き、恥ずかしさでひとり赤面してしまった。
何、長瀬の匂いなんかかいでるんだ私……。
変態かっ!
「な、なな何!?」
「あのさ、いっこ聞いてもいい?」
「?何よ。急に改まって……」
長瀬が伺いを立ててくるとか、かえって変なことを聞かれそうで怖いんだけど……。
「何でもっと委員の他のヤツ頼んねーの?」
長瀬が壁一枚挟んだ向こうにいて本当によかったと思う。
私の肩がギクリと動いたことに気付かれずに済んだからだ。
今まで私は、ことを荒立てたくないからだとか言っていた。
平和な日々を壊したくないからだって。
でも本当は、違う。
”怖い”からだ。
またあんな風に陰口を叩かれてしまうかもしれない。



