「あー?何お前。指図すんの?」
「き、来たら叩くんだからねっ!」
「ふーん。やってみれば?」
「な…ちょ…まっ…ぶひゅ!」
うっわ。
こういうの何て言うんだっけ。
ハブとマングースの戦い……みたいな。
山下さんが長瀬に顔を絞られ、手をジタバタさせている。
止めなくては……。
そう思って2人の間に入ったのは私……
ではなくて。
「やめてやって」
まさかのそれまで黙っていた金城くんだった。
山下さんの顔を絞っている長瀬の手を冷静に剥がす金城くんは、どこぞの少女漫画のヒーローみたいで……。
言うまでもなく、山下さんの目はハートマークと化している。
ただ目付きが悪いのか、睨んでるのか分からない長瀬を前に、金城くんは動じることなく大人の余裕を醸し出していて、そんな彼には長瀬もじっと見ているだけで何も言わない。
「花枝に何か用事あって来たんじゃねーの?何か紙持ってんじゃん」
「あ。忘れてた」
ちょ…何!?
まだ何かあるの!?
「ん」
「……なに?」
長瀬が私に差し出したのは、一枚の紙切れ。
【美化委員やります。長瀬 渉】
そこには、汚い字でそう殴り書きされている。



