その上、もの凄くプレッシャーに弱い体質だ。
そのことを、すっかり忘れていた。
私が長瀬に、気の利いた言葉なんか言えるわけがないんだ。
それなのに、一度引いてしまっ引き金は、打たない限り元には戻らない。
「き、距離に負けるような気持ちなら、しょせんそこまでって事だよ!わ、私達なら大丈夫大丈夫!ちゃんと連絡もするし!長い休みには帰ってくるし!あ、あと、私に男の人なんか近寄ってこないから!あと…あと…」
的外れだ。完全に的外れなことを言ってる。
自覚はある。
だけど、何を言ったらいいか分からない。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
長瀬は私に、何を求めてるの?
なんて言ったら正解なの?
「……それ、俺に言う?」
「……え?」
長瀬の体が、ゆっくりと離れていく。
「親が距離に負けて離婚した俺に、“距離は問題ない”とかよく言えるね」
「っ!!」
………間違えた。
間違えないようにしようって思ったのに、私は完全に間違えてしまったんだ。
今まで二人で作り上げてきた関係が、ガラガラと音を立てて崩れていく気がした。



