重たい空気の中沈黙していると、長瀬が先に口を開いた。
「ごめんね」
「え?」
「朝。一瞬頭真っ白になったわ」
「…あ…いや…私が忘れてたのがいけないんだし」
「まーね」
「ちょっと…」
そんなすんなり納得しないでよ。
私達は顔を見合わせると、同時に笑ってしまった。
一気に部屋の空気が和やかになって、ほっと胸をなで下ろす。
良かった。
これならちゃんと話せそうだ。
「あのさ、センパイ。俺、すげー心配」
ドキンと心臓が跳ねた。
長瀬が私の肩にもたれかかって来たからだ。
「し…心配?」
「うん。前にも言ったじゃん。校長の前で。センパイを一人にしたくねぇって」
「あ……」
“センパイは、辛いの隠すの上手いから。俺が側で気付いてやらないと頑張り過ぎるから…”
“センパイの側にいさせてください”
あのことか……。
「センパイが遠く行ったら、俺が一番に気づいてやれねーじゃん。センパイのそういうの、一つも見逃したくねーのに…」
私の指に、自分の指を絡めてくる長瀬。
熱い。
長瀬が触れた部分から心地良い熱が広がって、心までポカポカしてくる。



