食後のコーヒーをすすっていた長瀬は立ち上がると、歩くんを軽々と抱き上げ店の奥へと消えていった。
席に残されたのは、私と長瀬のお母さん二人。
しまった。
さすがに二人っきりは緊張する。
な、何か話題を……。
そんなことを考えていたら、長瀬のお母さんが先に口火を切った。
「最近、渉くんちゃんと学校に行ってる?」
「え。あ、はい!だるいだるい言いながらも、授業もちゃんと出てるみたいで…」
「そう。よかった!」
長瀬のお母さんは、ニッコリと微笑むと「今日ね」と言葉を続けた。
「本当はダメもとだったの。きっと誘っても渉くんは来てくれるはずないって分かってたし。だけど、ここのところあの子様子が変わったじゃない?夜に悪い子達と遊んでいる様子もないし…。もしかしたらって思ってね。試しに誘ってみたの」
ホットコーヒーの入ったカップに口をつける長瀬のお母さん。
私もつられて紅茶の入ったカップをすする。
窓から射す陽の光が温かい。
その光が、長瀬のお母さんの髪を透かす。



