一難去ってまた一難とは、まさにこのことを言うのでしょう。


by咲希





「センパイ。一緒にホテル行かね?」



「寝言は寝て言え」



卒業まで、とうとう1ヶ月を切った2月上旬。


朝っぱらからうちのクラスにやってきた長瀬がとんでもない爆弾を投下しやがった。


相も変わらず、聞き耳を立てていたクラスメイト達は、ばっちり私達の会話を聞いていたようで。


“ホ…ホテル……?”


そんな心の声が聞こえて来そうなほど訝しい視線を送ってくる。


心なしかみんな鼻息も荒い。


そして、やっぱり参考書を逆さまに読んでる樋口くん。


メガネ曇ってるけど大丈夫?



「あんた、そんなバカなことを言いにわざわざ新校舎まで来たわけ?」


「バカなことってなんだよ。いたって真面目なんだけど」


「どこが真面目!?朝っぱらからあんたの冗談に付き合わされるこっちの身にもなってよ!!しかも、何その頭!?また金髪に戻ってるし!!」


「センパイが似合わねーつったんじゃん」


先日の一件で、一度は真っ黒になった長瀬の髪の毛は、いつの間にか金髪に戻っていた。