「うん。でも、俺のせいで変になってるセンパイ、すげぇそそる」


「…っ…は、はぁ!?あんたってやつは!!こっちがどんな思いで…っ」


そう言いかけて、ぐっと口をつぐむ。


長瀬が私の前で両手を広げたからだ。


「な、何してるの?」


「ぎゅーしたいのかなって」


「はぁ!?そんなこと言ってない!」


「うん。でも、俺がセンパイのことどれだけ好きか、もっと感じたくない?」


「……っ」


「センパイ。おいで?」


長瀬は両手を広げたまま、意地の悪い笑みを浮かべてくる。


素直になれない私の感情なんて、お見通しって顔だ。


悔しい。


でも、今はそんなことよりも、長瀬からの“安心”がほしい。



私は意を決して、長瀬の腕の中へと飛び込んで行った。



–––––ドスッ!!


「うおっ。何これ、ぶつかり稽古?」


「うるっさいなっ!」


ムードのかけらもありゃしない!


長瀬の体に回した自分の腕とか。


長瀬の胸にくっつけてる額とか。


ムードを壊されると、“何してるんだ自分!”って余計に恥ずかしくなってくるんだってば!!