うそ。
全然丁重になんかじゃない。
私に“付き合って”と言う長瀬の視線と、クラスメイト達から注がれる興味津々の視線。
沢山の視線に射抜かれ蜂の巣状態の私。
そんな状況、今までひっそりと目立たないように生きてきた私にとっては、それはもう刺激が強すぎて……。
『無理っ!!ぜぜぜぜ絶対無理っ!!無理ですからっ!!!他当たってくださいっ!!!」
大パニックになった私は、腹の底からそう叫び、長瀬を突き飛ばすと、猛ダッシュで教室から逃げ出した。
何が起きたのか整理しきれていない頭で、“とりあえず返事はしたんだし!もう私の前に現れる事はないだろう!”そう高を括っていた私がバカだった。
大バカだった。
「なー、センパイ。聞いてんのかよ」
私の顔の前で手を振る長瀬に、もうもはやため息すらも出て来ない。
あれから長瀬は、事あるごとに私の前に現れ、付き合えだの、その気になったかだの言いながら、金魚のふんの如く付き纏ってくるようになってしまった。
最初の内こそ怯えていた私も、今では呆れ果てて物も言えない。
だからと言って無視を決めこめば……。
「ふっ」
「んぎゃぁぁぁぁぁ!?!?」