いつもの長瀬とは違う、惚けた様子の欠片もない低い声に、冷たい汗が背中を伝う。
「そ…それは…」
「じゃあさ、センパイは合格の話蹴ってでも、俺との関係をバラす方を選んだ?」
「それ…は……」
「あの場で、堂々と俺と付き合ってるって言えた?」
––––––言葉が……出なかった。
私に、そんな勇気あったのかって言えば、間違いなくなかっただろう。
あの時の私は、“先生達に長瀬との関係をどう誤魔化すか。”そればかり考えていた。
長瀬はきっと、それを見透かしてたんだ。
「……っ…」
動揺を隠せず俯く私の頭上から、長瀬のため息が降ってくる。
「……わりぃ。しばらく、俺のことほっといて」
長瀬はそう言い残すと、私に背を向け旧校舎に続く渡り廊下を渡って行ってしまった。
***
………私は、最低の人間だ。
目前に迫った中間テストに向けて、自分の部屋の机に向かったはよいものの、開いた教科書の内容は全く頭に入っては来ない。
それどころか、繰り返し再生される長瀬の言葉。
“しばらく、俺のことはほっといて”



