「冗談だよ?」


「当たり前だ」



と。タイムリーに校門から山吹さんが入って来て、こちらに気付いた山吹さんと私の視線がパチリと合う。


だけど、ゆっくり視線をずらした山吹さんが長瀬を確認するや否や、真っ青になって風のごとく猛ダッシュ。


あっという間に昇降口へと消えていってしまった。



あーあ。


あれは間違いなく本気にしてるよ。


前はあんなに長瀬にベッタリだったのに。


山吹さんが、少しだけ気の毒にも思えてくる。


いちいち敵視してくる山吹さんに、困り果てていたのは事実だけど、まぁあれも裏を返せば長瀬のことが大好きだったからなわけで。


長瀬への気持ちに気付いた今なら……うん。まぁ、理解出来なくもないのかなって。


好きな人が、自分じゃない誰かのものになってしまうと思ったら、必死にもなるよね。


山吹さんは、私と違って自分の気持ちに真っ直ぐで正直なだけだったんだと思う。


まぁ、それがあまりにも追っかけ体質だったがために、長瀬にとどめをさされてしまったみたいだけど…。


とどめをさした張本人は、どうでもよさそうにあくびなんてしてるし、浮かばれないなぁ山吹さん。


「つーかさ、俺のことよりセンパイじゃね?」