長瀬の腰に腕を回して、まるで犬のように尻尾を振る山吹さんの顔面を掴んで、長瀬は容赦なく引き剥がそうしている。


だけど、山吹さんは必死に長瀬の腰にしがみついて意地でも離れる気はないらしい。


「昨日は家まで送ってくれてありがとぉ!今日はるかね!長瀬にお礼がしたくて、お弁当作ってきたんだぁ」


「いらねーよ」


「今日のお昼、一緒に食べようよぉ〜!」


「お断りしマス」



「……」


…へぇ。ふーん。へーえ。


長瀬、山吹さんをちゃんと家まで送ったんだ…。


なんだ。優しい所あるじゃん。


私じゃなくても優しく出来るんじゃん。


長瀬って、そういうこと出来るヤツだったんだね。


へーえ。ふーん。


てかさ……何だかんだで長瀬もまんざらじゃないんじゃん。



そう思ったら、なんだか腹が立ってきて。


今まで長瀬が私にくれた言葉まで、全部薄っぺらいものに思えてきて……。


「……浅木くん。私、もう教室行くから。朝の清掃もキリがいいとこでやめてね」


「あ…はい」


「センパイ待って。俺も一緒に行…


「長瀬はっっ!!!!」