だけど、たまに自分らしさってやつの中で息苦しくなる時があるんだ。
下に3人も弟がいれば、頼るより頼られる方が得意になるのは無理ないと思うんだけどね。
でも、私だって言うほど強くはない。
前を歩く長瀬は、たまに私を少し振り返っては、すぐにまた背を向け先を進んで行く。
人混みが苦手なのかいつにも増してだるそうな足取りだ。
恐らく、金城くんと山下さんのやり取りなんて気付いてもいないだろう。
あ。また振り返った。
まさか、私がはぐれないか心配してくれてるとか?
だからさっき、私と手をつなごうとしたとか?
……いや、まさかね。
今までの長瀬からして、ただの下心だっていう線の方がよっぽど濃厚だ。
––––“はぐれても探してやんねー”
さっきの長瀬の言葉を思い出して、また腹が立ってくる。
ああやって私を扱うのは長瀬くらいのもんだ。
年下のくせに生意気。
本当に変なヤツ。
「おーい!咲希!こっちこっち!」
ようやく石造りの鳥居が見えたところで、その下で茉莉がこちらに手を振っているのが見えた。



