私は、カバンの中からポインセチアの飾りを取り出すと、長瀬に突き出した。


「あんたが守ってくれたから、傷一つついてない!」


「?よかったじゃん。何そんな怒ってんだよ」


「お、怒ってない!ただ、もうこんなこと二度としないで!」


真っ赤になって、唇を噛み締める私を長瀬は真っ直ぐ見つめてくる。


怒ってるわけじゃないけど、これじゃ怒ってると言われても仕方ない。


だけど、少しでも気を緩めたら、必死で堪えてるものが溢れ出してしまいそうで、とてもじゃないけど普通になんて出来ない。


確かに、先生からもらったのは嬉しかったよ。


でも、別に壊れたって構わなかったんだよ。


あんたがこんなことになるより、ずっといいよ。


「…だってそれ、センパイの大事なもんでしょ?」


「……え?」


顔を上げると、長瀬の茶色い瞳は真っ直ぐ私を映し出していて、つい吸い込まれそうな感覚に陥って、ゴクッと唾を飲み込む。


「もし壊されたら、センパイ泣くでしょ?」


「な、泣かないよっ!子供じゃないんだから」


「センパイは泣くよ。絶対一人でこっそり泣く」


「〜〜〜っ!」


……何であんたはそうやって、私の弱い部分を見抜いてくるんだ。