「…あんたを置いていったりしない…っ」
自分でも無意識に零れたその言葉。
何でそんなことを口走ってしまったのかよく分からない。
だけど、今は長瀬を見失っちゃいけない気がする。
ヤンキーでも、生意気でも、エロガキでも、いっつも空気を読まずに私を困らせるけど、
そっちの長瀬の方が、ずっと安心する。
唇を噛み締め俯く私の頬にヒヤッとしたものが触れる。
視線を上げれば、陽を透かし金色に輝く髪をなびかせた長瀬が、優しい笑みを浮かべ私の頬に触れていた。
その冷たい手の親指で、愛おしむように私の頬を撫でると。
「ばーか」
と言って、柔らかい笑みを見せた。
不覚だ。
不覚にも程がある。
だけど、私は今間違いなく……
………長瀬にときめいてしまった。
「おー長瀬。お前、こんなとこいたのか」
男達は、私達の前にやって来ると、下品な笑みを浮かべながら、金属バットをくるくると回し歩み寄ってくる。
「お前、チーム抜けたって?俺らがいねー間に何勝手なことしくさってんだよ?」
長髪の男が長瀬を睨みそう言うと、他の2人も下品な野次を飛ばしてくる。



