外郎売り

第四

来(く)るは来(く)るは何(なに)が来(く)る、
高野(こうや)の山(やま)の、おこけら小僧(こぞう)。 
狸百匹(たぬきひゃっぴき)、箸百膳(はしひゃくぜん)、
天目百杯(てんもくひゃっぱい)、
棒八百本(ぼうはっぴゃっぽん)。 

武具(ぶぐ)、馬具(ばぐ)、ぶぐ、ばぐ、
三(み)ぶぐばぐ、
合(あ)わせて武具(ぶぐ)、馬具(ばぐ)、
六(む)ぶぐばぐ。 

菊(きく)、栗(くり)、きく、くり、
三菊栗(みきくくり)、合(あ)わせて菊栗(きくくり)
六菊栗(むきくくり)。

麦(むぎ)、ごみ、むぎ、ごみ、三(み)むぎごみ、
合(あ)わせてむぎ、ごみ、六(む)むぎごみ。 

あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は、
誰(た)が長薙刀(ながなぎなた)ぞ。 

向(む)こうの胡麻(ごま)がらは、えのごまがらか、
あれこそほんの真胡麻殻(まごまがら)。 

がらぴい、がらぴい風車(かざぐるま)、 
おきゃがれこぼし、おきゃがれこぼし、
ゆんべもこぼして又(また)こぼした。 

たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、
つったっぽ、たっぽたっぽの一丁(いっちょう)だこ、 
落(お)ちたら煮(に)て食(く)お、
煮(に)ても焼(や)いても食(く)われぬものは、 
五徳(ごとく)、鉄(てっ)きゅう、
かな熊童子(くまどうじ)に、石熊(いしくま)、
石持(いしもち)、虎熊(とらくま)、虎(とら)きす、 
中(なか)にも、
東寺(とうじ)の羅生門(らしょうもん)には、
茨城童子(いばらきどうじ)がうで栗(ぐり)五合(ごんごう)つかんでおむしゃる、 
 かの頼光(らいこう)のひざもと去(さ)らず。