外郎売り

第三

そりゃそら、そらそりゃ、
まわってきたわ、まわってくるわ。 

アワヤ咽(のど)、さたらな舌(した)に
カ牙(げ)サ歯音(しおん)、 
ハマの二(ふた)つは
唇(くちびる)の軽重(けいちょう)、
開合(かいごう)さわやかに、 

あかさたなはまやらわ、おこそとのほもよろを、 
一(ひと)つへぎへぎに、へぎほしはじかみ、 
盆(ぼん)まめ、盆米(ぼんごめ)、盆(ぼん)ごぼう、
摘立(つみたで)、摘豆(つみまめ)、
つみ山椒(さんしょう)、 

書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそうしょう)、 
粉米(こごめ)のなまがみ、粉米(こごめ)のなまがみ、
こん粉米(こごめ)の小生(こなま)がみ、 
繻子(しゅす)ひじゅす、
繻子(しゅす)繻珍(しゅちん)、 
親(おや)も嘉兵衛(かへい)、
子(こ)も嘉兵衛(かへい)、
親(おや)かへい子(こ)かへい、
子(こ)かへい親(おや)かへい、 

古栗(ふるくり)の木(き)の古切口(ふるきりぐち)。 雨合羽(あまがっぱ)か、番合羽(ばんがっぱ)か、
貴様(きさま)のきゃはんも皮脚絆(かわぎゃはん)、
我等(われら)がきゃはんも皮脚絆(かわぎゃはん)、 
しっかわ袴(ばかま)のしっぽころびを、
三針(みはり)はりながにちょと縫(ぬ)うて、
ぬうてちょとぶんだせ、 
かわら撫子(なでしこ)、野石竹(のせきちく)。 
のら如来(にょらい)、のら如来(にょらい)、
三(み)のら如来(にょらい)に
六(む)のら如来(にょらい)。 

一寸先(ちょっとさき)のお小仏(こぼとけ)に
おけつまずきゃるな、
細溝(ほそみぞ)にどじょにょろり。 
京(きょう)のなま鱈(だら)奈良(なら)なま学鰹(まながつお)、ちょと四(し)、五貫目(ごかんめ)、 
お茶(ちゃ)立(た)ちょ、茶(ちゃ)立(た)ちょ、
ちゃっと立(た)ちょ、茶(ちゃ)立(た)ちょ、 
青竹(あおだけ)茶(ちゃ)せんでお茶(ちゃ)ちゃと立(た)ちゃ。