「おー深海、もう来てたんか」



「やっほ、九遠ークオンーセンセ」



ガラッと勢いよく扉を開けて入ってきた教師、もとい九遠に、ソファで寝そべっていたあたしは軽く手を上げて挨拶をした。



「おまえ俺じゃなかったらどうするつもりだ」



呆れ顔で苦笑しながら言う九遠にふっふっと不敵に笑ってみせる。



「足音でわかっちゃうんだなーこれが。センセーじゃなかったらちゃんと起き上がりますよー」



「そーかい。…ん?今日は弁当じゃないのか」



変わらない表情で言った九遠は一呼吸置いてあたしの手元に目をやった。



「あーちょっと時間なくてさ」



苦笑いで返すと九遠の目つきが一瞬で険しくなった。



「…深海、化粧落として」



「…ヤだよ」



九遠の鋭い目から逃れるように視線を逸らせば、素早く距離を詰めてきた九遠にソファに押し倒されてしまった。



「深海」



「…なに」



「化粧、落として」



有無を言わせぬ口調なのに決して厳しくはない優しい言い方。



観念して溜息を吐くと、あたしを優しく起き上がらせメイク落としを差し出してきた九遠。