「ま、好きだからって、カナダまでついてきてくれるとは限らないけどな」
にやりと笑う親父に、「ちぇっ……ひと言多いんだよ。人が心配してることをっ」って、苦笑いしながら返して。
少し驚いた。
自分の口調から、覆うようにのしかかっていた何かが消えたような気がしたから。
「ごめん。突然帰ってきて、こんな話。びっくりしただろ?」
ところが。
親父は笑いながら首を振ったんだ。
「なんとなく、予感はあったよ」
「は……?」
予想外の言葉に、オレは目を見張った。
「お前が奈央のことを言いだした、あの時に。もしかしたら、いつかこんな日がくるかもしれないってな」
つまり、オレが高校生の時からってことか?
「どうして……」
「どうしてって……一体何年お前の父親やってると思ってるんだ? 普段と違うってことくらい、すぐに気づいたさ」
「も、もしかして……オレの気持ち、あんな昔から知ってたのかよ?」
「まぁはっきり言って、相当挙動不審だったからな。あの時のお前」
きょ、挙動不審!?
親父はくっくっと必死に笑いをこらえてる。
「恋する男の目ってやつだったよ。完全に」


