「座りなさいよ、とにかく」

引っ張られるようにして、隣のスツールに崩れ落ちる。

「ビールでいいの?」
適当にうなずいたけど、全然聞いちゃいなかった。

一体2人は何を話してるんだろう?
時折楽しそうな笑い声が聞こえるたび、キリキリと心臓が悲鳴をあげる。

店内のざわめきに耳が慣れ始めると、
次第に2人の会話をとぎれとぎれに、聞き取ることができるようになった。


「わたしは……何作ろうかなあ」

「パスタか炒飯か、炭水化物系がほしいんじゃない?」

「そうですねえ、じゃあ……と、このパスタどうですか? 根菜とチーズのヘルシーパスタ」

2人は一緒にタブレット端末をのぞきこんでいるらしい。
テーブルの大きさのせいだろうけど、2人の距離は相当近い。


「いいね〜、メタボが気になる年齢にはぴったりだ。じゃ、奈央ちゃんはパスタ担当ってことで」

な、奈央ちゃん!?
オレはギョッと目をむいた。