「そちらは、今期の新作ですよ」
顔をあげると、中里さんがオレをじっと見てる。

観察するようなその視線が気になったけれど。
もっとじっくり見たいという誘惑にどうしても勝てなくて。オレは目を戻した。
これくらいシンプルだったら、仕事でも支障なさそうだな。
普段からつけてもらえそうだ。

「そのリング、気に入ったのかい?」
高林さんもやってきて、オレの視線の先を覗き込む。
「沢ちゃんに?」

「そうですね……似合いそうかなって……」
奈央さんの左の薬指。
オレの手から、こんな指輪をはめてあげられたら。

そんな日は……くるんだろうか?

「そうかぁ……うんうん、うんうん」
気が付くと、高林さんはなぜか何度も頷いてる。
え? ……なんだ?

「あの……?」

「ううん。なんでもないよー。ただちょっと、運命ってやつを信じたくちゃったなあと。ねえ、中里さん?」

そう言って、楽しげに中里さんを見上げる。
彼の方はというと、「そうですね」と小さくつぶやくと、メガネをぐいっと押し上げ、横を向いてしまった。