涙をぬぐった奈央さんは、いたずらっぽく笑った。
「わたしのことはもう大丈夫。だからお母さんも、自分の幸せ考えていいんだからね」
今度は、香澄さんの頬が一気に染まる番だ。
「なな何言いだすのっ……こんなところで!」
「えーと、何も言ってないよ。洋平さんのことなんて、な〜んにも。ねえ拓巳?」
「そうだね。新条さんのことは、何もね」
笑いをこらえて、オレも悪ノリ。ごめんなさい、香澄さん。
「ちょ……ちょっとあんたたちっ! おお親をからかうんじゃありませんっ!」
真っ赤になって動揺しまくっている香澄さんは、オレが言うのも失礼かもしれないけど、とてもかわいい。
「あ、ケーキ買ってきたのよね。ケーキ! おいしいって評判なのよあの店っ」
言いわけのようにつぶやきながら、そそくさとキッチンへ駆け込んでしまった香澄さんを見送って。
オレたちは思わず、同時にぷっと吹きだした。
確かに。これは脈あり、どころか、確定だな。


