「……あぁっ! ちょっと待って!」
突然奈央さんがオレの顔をぐいっと押しやった。
「え?」
お預け食らって、がっくりしながら奈央さんを見おろすと、
その目はカレンダーを凝視していた。
「すぎちゃった……」
「何が?」
「バレンタインよ!」
「あぁ……」
そういえば、いつの間にか……今日は16日か。
「じゃあ、チョコ味のフレンチトーストでも作ろうか?」
「え、それおいしそう……じゃなくて! わたし、バンクーバーに送っちゃったの。チョコ」
「ええっ」
奈央さんのチョコがバンクーバーに!?
「あ、でも賞味期限は半年くらいあったはずだから。帰ってから食べてね」
奈央さんは慰めてくれたけど。
でも……ちょっと待て。
……バンクーバーの、あの家に送られたんだよな。


