「なんで……毎日一緒に帰ってるよ?」
戸惑いながらそう言うと花が怒ったようにずいっと顔を近づけてきた。
その勢いにたじろぐと、花が顔を元に戻してふんっと鼻息荒く口を開く。
「ちっがう!こーゆーのは雰囲気が大切なんだよふ・ん・い・き!
特別な日に特別なシチュエーションで渡すのが良いの!」
「う、あ、はいゴメンナサイ……」
ふーっと未だ興奮冷めやらぬと言った様子の花に思わず謝ると、花は我に返ったように顔を上げて頬をかいた。
「……まあ、あたしとしても楽しいイベントなわけで」
あんたら見てると腹は立つけど面白いのは面白いのよ、とあっけらかんと言い放つ花に私はあんぐりと口を開く。
「なっ、もー、花!」
小突くとまたあははは、と笑われて私は唇を尖らせた。
「あ、ほらほら教室いるんじゃないの?
あんた、声かけなさい」
そう言って彼氏くんの教室の扉へ向かっていく花。
3つ離れた彼氏くんの教室の前は、移動教室の時くらいにしか通ることはない。
だから、チャンスなのはわかってる。わかってるんだけど……!
とは言っても行くしかないわけで。私は花の後ろからそうっと教室をのぞき込んだ。


