はいはい、と言いつつもがっちりと私の肩をホールドして引き離す花。

そんな親友に相変わらずだなあ、と苦笑して、私は鼻をずずっとすすった。


そう。今日、2月14日はバレンタインデー。

私たち高校生……特に女子高校生なんかにとっては、今日はとーっても大切な日で、

そして、勝負の日なんです。

「朝はやっぱ無理だったけどっ放課後!渡す!

ね、花!」

ぐっと再び拳を握る私に、花も肘をつき直しながら遠くを見つめて呟いた。

「あたしの名前はそんなにホイホイ呼べるのにねぇ……」

ぐさっ、と聞こえるはずのない音がして、私は胸を押さえる。


……花さん、ばっちり聞こえてます……


□■□


移動教室から帰りながら、花はぴんと私に向かって指を立てた。

「まあ何はともあれ、まずは約束をしに行こう」

「約束?」

首を傾げると、花が飽きれたように大げさな仕草で眉をあげた。

「当たり前でしょ!放課後教室にいてくださいって言うの!」

それを器用だなぁ、とぼんやり見つめていた私は、思いもよらなかった言葉にびっくりして、教科書を抱えていない方の手をぶんぶんと振る。