「わかってたんだ。わかってた。

だから、もしかしたら、っていうか。

……俺に、くれるんじゃないかって」

これもう、見た瞬間思いっ切りチョコだってわかったし、とかずくんが紙袋を掲げた。

「でもさ、やっぱ自分から『チョコください』とか言うの恥ずかしすぎるだろ?がっついてるみたいだし。だからまるで今日は何の日だかわかりませんって感じで振舞ってたんだよ」

「なっ、なぁ……!?」

かずくんの口から次々と零れ落ちる真相に、私は途端に真っ赤になって羞恥のあまりぷるぷると震えた。

まさか最初っから全部全部お見通しだったなんて!

「っていうか、かずくん以外に渡す人がいるわけないしーっ!」

もういろいろ馬鹿らしくなってそう声を張ると、かずくんはがっくりと肩を下ろしてしおらしく項垂れた。

「だよな。ごめん。あきがそういう子だって俺が一番わかってんのに。

……さっきは、ちょっとだけ不安になった。お前のこと疑った。ほんっのちょっとだけど、そんなの、関係ないな」

「さっき?」

私がかくんと首を横に倒すと、かずくんがちょっぴり頬を膨らませる。

「誰だっけ。あいつ。……あいおい?そんな名前だったか。

まあそれはどーでもいい。で……俺にチョコくれんのはきっと放課後なんだろうって思ってたから、朝はそんな不安にはなんなかったんだけど、」

とそこで言葉を途切れさせ、私の目を見つめた後、とてつもなく言い辛そうに、あるいは恥ずかしそうにかずくんは半ば叫ぶように投げやりに続けた。