そんなに物凄く改まってって言うほどではないけど、確かに誠意を含んだそれに、逆に私が驚いた。
「あ、頭上げて……!」
手を恐る恐る伸ばしながらも無理矢理頭を抱えて持ち上げると思ったよりはすんなりと顔を上げてくれたものの、その表情は心なしか暗い。
しばらく床を見つめていたかずくんがそんな表情のまま口を開く。
「まずは……ごめん。朝」
「朝?」
朝ってなんかあったっけ?
……あ、私が、避けた、から?
でも彼の口から紡がれたのは私が想像していたのとは、
「……なんであきが『2月』を強調してたのか、ほんとはわかってた。なのに、俺すっとぼけたから」
―――もっと違う言葉。
「え、へぇっ!?」
思いもよらなかったその言葉に私は堪らず赤面した。
や、やっぱり私ってばわかりやすすぎた?
それに、わかってた、って……それは、つまり。
「今日が、2月14日だから、だよな。
……バレンタインデー、だから」
かずくんが珍しく声を固くしている。
恥ずかしくて視線を合わせられていなかった私がちらっと彼の顔を窺うと、微かではあっても、はっきりと赤く色付いた頬が私の瞳に映った。


