ぴんぽーん、と不意に鳴り響いたチャイムの音に私はびくうっ!と自分でも驚くほど体を跳ねさせてしまった。


毎朝のことなのに、今日はやっぱりどうにも調子がおかしい。

私はまだばくばくと激しく波打っている胸を押さえて、インターフォンのボタンを押す。


「は、はいぃ」

ひええええ、声が裏返っちゃった。

『……なんだ?どうした?』

ぽつぽつと穴の空いたスピーカーから漏れ出てくる声は想像通りに不審そうな響きを帯びていて、

私は見えないとわかっているのにその前でぶんぶんと首を振った。

「な、なんでもないっ。なんでもないから!」

『……ならいいけど。

早く出てこいよ。遅刻するぞ』

「わかった!」

まだ訝しげではあるものの私を促すその言葉に大きく返事をして、インターフォンのボタンを半ば叩くようにして押し、玄関に向かって駆け出す。


これもまた今日のために綺麗にしたローファーを急いで履きながら、私はため息をついた。


「……今日何の日か知らないのかなぁ」