見られたくないなぁ、という思いと、かずくんの顔をもっと見たい、でももう少しこのままでも、なんて思いがせめぎあって目が回る。
「あき」
「……っ!」
かずくんが、あごを私の肩に乗せたまま、私の名前を呼んだ。
そこから大好きな人の声が響く、それだけで、背中に電流が走ったみたいにぞくっとする。
私が身動きも取れずにかずくんの腕の中でぴしりと固まっていると、かずくんはふっと笑いをこぼして私の両肩を優しく掴んで体を放した。
ああ……残念だなぁ、と。
普段だったら絶対に恥ずかし過ぎて死んでしまっているような気がするほどのシチュエーションなのに、私の頭の中に、沸騰しそうなほど熱くて、それでいてこんなことを考えられるほどとっても冷静なところが、ある。
―――バレンタインデーは、
“女の子にとってとーっても大切な日なんです”。
そんな言葉を、私はぼんやりふわふわとした頭の中で繰り返した。
やっと、その意味が“ちゃんと”わかったよ、私。


