【短編】私の彼氏は宇宙一ずるいんです。


付き合ってから、そして付き合ったその時でさえ、私が口にしていなかった言葉。

そんなの良いはずないのに、かずくんはいつでもその言葉を私にくれるから。それに甘えて、私は良いかな、ってどこか思ってたんだと思う。

でも、やっぱり。そんなはずなかったんだ。

好きなら、『好き』って……ちゃんと、言わなくちゃ。

ちゃんと、想いを、伝えなくちゃ。


だって、その証拠に―――ほら。

かずくんの顔……夕焼けよりもずうっと、真っ赤。

見たこともないような、甘い顔をしてて。

そんな初めての表情を見る度、私は、『ああ、好きだなぁ』って、そう思うの―――


「かずくっ……!?」

1度口に出してしまえば、もうその想いは止まらなくて、私がもう一度呼ぼうとしたその名前は、最後まで紡がれることはなかった。


かずくんが……私のことを、ぎゅうっ、って抱き締めたから。

強く強く抱き締められて、痛いというよりも……くらくら、して。

「かずくん……」

心臓が、自分のものじゃないみたいに、ばくばくと暴れて、もうこれも止められない。

きっと私の顔はかずくんよりも真っ赤っかに違いない。