【短編】私の彼氏は宇宙一ずるいんです。


「……あのっ!今日が、何の日、か、知ってます……か」

私の言葉はどうしても尻すぼみになってしまう。

堪らず視線を足元に落とすと、ふたり分のちょっぴり汚れたつま先が目に入って、なんだか鼻の奥がツンとした。


彼氏くんは……答えない。

沈黙に耐えきれなかった私は、目は伏せたまま、胸に抱えていた例の紙袋を彼氏くんに押し付けた。

「これ!えっと、今日は……バレンタインデー、だから。

……もらって、くれる?」

ちらっ、と彼氏くんの表情をうかがうと、何故か彼氏くんはびっくりしたような、嬉しそうな、それでいてちょっと悔しそうな、なんとも言えない顔をしていて。

でもその顔は、決して私を突き放すようなものではなかったから。


私はもう一度、息を吸って口を開いた。今度は、彼氏くんの目をしっかり見据えて。

「私は、私は……か、ず、くんが―――逢阪和くんが、好きです。

そして、これからもずっと……ずっと好きです」

初めて彼氏くんの名前を呼んだ私の声は、自分でも笑ってしまいたくなるほど震えていて。

でも、それでも私が言葉を続けたのは、どうしても彼氏くんに―――かずくんに、私の想いを知って欲しかったから。