【短編】私の彼氏は宇宙一ずるいんです。


ぎゅっ、と私が紙袋を抱え直すと、それを見て相生くんが息を詰めて、目線を逸らした。

「いいって言ってるじゃん。おれだって、別に遠山さんのこと困らせたかったわけじゃないし。……てか、困らせたいわけないし。

やっぱおれはアウトオブ眼中なんだなーって改めてわかっただけ……良かったよ」

はは、と苦笑する相生くんの口から、直接決定的な言葉を言われた訳では無いけれど、確かにその表情は、私自身にも察せられるほど雄弁に彼の想いを物語っていて。

「行って。……ごめん」

「私こそ

……ごめん」

切なげに顔を歪める相生くんにどうにかそれだけ言って、私は鞄を引っつかんで駆け出した。


□■□


「はぁっ、はあっ……!」


うぬぼれかもしれない……でも。

たぶん、彼氏くんはきっとなんだかんだ私を置いて帰るはずがないから。


膝に手をついて呼吸を整える。

呼吸は落ち着いても、鼓動は……依然激しく波打つままで。

どうにもならないと諦めて、私は彼氏くんの教室のドアを開けた。


がらがらっ、と音を立ててドアが開くと、私の目の前に夕焼けに深い東雲色にとっぷりと染まる教室が見えた。

いつもと違うその色に、どうしてもどきっとしてしまう。