……相生くん、どうしたんだろう。
顔を反らすとそれを追っかけてくるみたいに顔を近づけられる。
「え、えっと、もう帰るので!助けてくれてありがとう!」
そう言って頑張って腕を振りほどこうとしてみるものの、効果ナシ。
「あのさ、遠山さん」
それどころか、私の耳元で私の名前を呼んできました。
ひええ、どうしたんだろう本当に!
助けを求めて花を見つめるものの、薄情な親友は片頬に楽しそうな笑みを浮かべてこちらに微かに手を振るだけ。
ちょっと花!私彼氏くんにこれ渡さないといけないんだってば……!
なんて花に言っても仕方が無いか。
「ごめん、相生くん!ちょっと私、これ渡しに行かないといけないの……!」
私は火照る頬を自覚しつつ、腹をくくって紙袋を掲げた。
相生くんがそれを見てはっと目を見開く。きっとこれがチョコだとわかったのだろう。
これだけ言えばきっとわかってくれるはず。そう思ったのもつかの間、相生くんは私を掴む手にもっと力を込めた。
「……ごめん。時間、無い?」
……あるわけが無い。無いけど、これが何かわかってなお言ってくるだなんて。
私の、思い上がりでなければ、相生くんは……


